好きなことを仕事にし続けるということ

好きなことを仕事に出来る人は少ないと思う。

そして、好きなことを仕事にし続けられる人はさらに少ないと思う。

仕事にすれば、どうしてもストレスに感じる部分も出てくる。好きだったハズのことが嫌いになりそうな時だってある。

続けるのは、始めるよりもずっと難しいと思う。

だから、好きなことを仕事にし続けられる人は少ない。

総合格闘技団体「DEEP」を創設したのは、好きなことを仕事にし続けた稀有な人だ。

佐伯繁(さえき・しげる)さん。

富山生まれの名古屋育ち。

学歴もコネもない状況からご自身の才覚と努力で財をなした。

佐伯さんの起こした会社は今も名古屋に存在し、お世話になった男性もそれなりにいるであろう某店舗紹介サイトを運営している。

そんな佐伯さんがご自身の資産をもとにDEEPを創設したのは2001年のこと。

格闘技業界の厳しさを知らなかったワケではないだろう。

DEEP創設前もプロレスの興行権を買ったりしていたが全く儲けは出なかったらしい。

それでも格闘技団体を創設するぐらいなのだから、よっぽど好きだったのだろう。

イチから会社を興して大成功をおさめた佐伯さんだったが、やはり格闘技ビジネスは儲からなかった。

次第に赤字は累積し、あれだけあった資産もかなり減ってしまった。

一時は「もうやめよう」と考えたらしい。

しかし、当時圧倒的な人気を誇っていたPRIDEと提携することで何とか持ちこたえてみせた。

大会の規模を縮小したりと妥協も迫られたが、DEEPは生き残り続けた。

PRIDEは消滅し、後継的存在だったDREAMも長くは続かなかった。

それでも、DEEPはしぶとく生き残った。

佐伯さんは格闘技を仕事にし続けた。

「格闘技が好きだ」という気持ちがなければ無理だっただろう。

そうこうしている間にRIZINが生まれる。

DEEPで大きくなった元谷友貴、渡辺華奈、井上直樹、武田光司といった選手がそのRIZINで活躍するようになった。

そして、遂にDEEPは100回目のナンバリング大会を開催するまでに至った。

ずっとトップは佐伯さん。

佐伯さんは儲からない格闘技ビジネスにずっと携わり続けた。

かつて強い絆で結ばれていた人たちに去られてしまったりもした。

体調を崩して緊急入院したりもした。

それでも自分が大好きな格闘技を仕事にし続けた佐伯さんがケージの中からお客さんに挨拶をする。

自虐を入り混ぜた感謝の言葉を述べると、観客席から暖かい拍手が返ってきた。

コロナ感染防止の観点から、会場にびっちりお客さんを入れることは叶わなかった。

その会場も決して大きくはない。

それでも、記念すべき「DEEP100」の会場には祝福が満ちていた。

好きな事を仕事にし続けるのは本当に厳しいことだと思う。

でも、厳しいのと同じくらい幸せなことだとも思う。

「DEEP100」本当に素晴らしい大会だった。

あの祝福に満ちた瞬間は、好きなことを仕事にし続けた男が得られたささやかな収穫だったのかも知れない。

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