K-1コロナ問題 社会にどう「歩み寄る」のか?
新型コロナウイルスのパンデミックが懸念される状況でさいたまスーパーアリーナでのビッグマッチを強行したK-1がすごいバッシングを浴びていますね。
K-1としても、苦渋の選択だったと思います。彼らにとって年間最大の興行ですし、注目度も高い。広告宣伝費もかなり投下したでしょうし、営業活動も熱心に行ってきたハズです。もしも中止にしてしまえば、けっこうな額の損失になったと思います。即倒産とはならないでしょうが、まず間違いなく経営は苦しくなったと思います。
個人的にまずい対応だなと思ったのは、K-1の運営会社がチケットの払い戻しに応じなかったことです。
K-1のチケットは席種にもよりますが、決して安くありません。払ったチケット代が惜しくて、コロナ感染の不安を感じながらも、会場に来た人もきっといるハズです。
こんなことは想像したくありませんが、コロナ陽性を疑われるような体調の人がもしもK-1のチケットを持っていたら、そのチケット代を惜しむあまり、解熱剤を飲んで会場に来てしまうかも知れません。熱さえ一時的に下がってしまえば、よほど厳重なチェックでも受けない限り入場を断られることはないでしょう。
チケットの払い戻しに応じれば、K-1の収益は減ります。赤字になってしまうかも知れません。しかし、払い戻しという対応もせず「私たちはお客様と社会のためにできる限りのことをやっています」と言えるのでしょうか?
K-1には、「開催中止」までは求めませんが「払い戻し」という形でもう少し社会に対して歩み寄りの姿勢を見せて欲しかったというのが率直な思いです。
今回のコロナ騒動でひとつ気になる点があります。K-1って、ぶっちゃけアンチの多い団体でもありますよね。「格闘技が好きだけどK-1は好きじゃない」という人も決して少なくない。でも、そんな人たちも今回はK-1の味方をしているような気がするんです。
その背景には、K-1へのバッシングがいずれは自分の好きな団体にも波及するのではないかとう恐怖があるんじゃないかと思うんですが、それが現実のものとなる可能性は決して低くありません。
事実、4月19日に大阪のエディオンアリーナ第1競技場で開催される予定だったRISEが大会の中止を発表しました。また、新日本プロレスもビッグマッチである両国大会の中止を23日に発表しました。
ビッグマッチを強行したK-1も3月28日に後楽園ホールで開催されるKrushは無観客試合とすることを余儀なくされました。
RISEの場合は、参戦予定だった多くの外国人選手の入国が難しくなったという事情もあるでしょうが、やはりK-1にたいする風当たりの強さを目にしたのも大きいと考えるのが自然です。
K-1にたいして吹き始めた強烈な向かい風は、格闘技・プロレス業界全体に波及してくるような嫌な予感がします…。
3月25日の記者会見で、東京都の小池都知事があえてK-1の名前を挙げたのは、他団体にたいする牽制の意味も込められているのかな?という邪推も働いてしまいます。
こうした現状から、格闘技ファンの中には「普段は格闘技やプロレスに興味ないくせに、こういう時ばかり文句を言ってくる」と不満を抱いている人もいるようです。
気持ちは分かるのですが、それはちょっと違うんじゃないかと思っています。
だって、K-1のコロナ問題(というか格闘技のコロナ問題)って、もう社会全体の問題になっていると思うんですよね。
むかしスターダムで行われた世志虎vs安川惡斗の試合が凄惨な流血試合となってしまい、普段はプロレスなんて見向きもしないワイドショーなどにも取り上げられたことがありました。
あのような話題であれば、「こういう時ばかり文句を言ってくる」という不満も理解できるんですよね。だって、あの試合はプロレスファンを凍りつかせてしまいましたが、決して社会全体になにか大きな影響を与えたワケじゃないですよね。あくまでも、格闘技・プロレス村の中でおさまる問題でした。
しかし、今回のコロナ問題は違います。
さいたまスーパーアリーナでコロナウイルスに感染してしまった人が、自覚症状のない状態で、帰宅して家族と一緒にご飯を食べたり、会社に行くために電車に乗ったり、社内の会議に出席したりする可能性があるワケです。つまり、感染源になってしまう。もろに社会に影響を与えてしまう問題です。
いつもは格闘技やプロレスに興味のない人だって、なにか言いたくなりますよね。だって、もしかしたら自分自身や自分の家族に被害が及ぶ可能性もあるワケですから。
もちろんヒステリックにK-1を批判するのはおかしいです。「K-1の会場で使われた消毒液がもったいない」「たまアリに来た観客を全員隔離しろ」とかいう批判は因縁をつけているようにしか思えません。
しかし、今回の場合は、あまりにもダイレクトに社会にマイナスの影響を与えかねない出来事でした。
格闘技・プロレス業界も、格闘技・プロレスファンも社会という大きな枠組みに所属しています。その枠組みの中で生きる以上、今回のコロナ問題については、K-1とRIZINと新日本プロレスの区別もあまりついていないような人たちから文句を言われることもある程度受忍しなければいけないような気がします。
社会への歩み寄りを見せなければいけないのは、K-1だけではなく、格闘技・プロレスに携わるすべての人たちではないでしょうか?
あくまで「歩み寄り」なので、一方的な譲歩ではありません。譲れない部分は主張していかなければいけないと考えています。
ひとりの格闘技・プロレスファンとして、今回のコロナ騒動が一刻もはやく鎮静化することを心から願っています。