「ドリーム・マッチ」という麻薬 武尊vs那須川天心が実現しない理由

11月24日に横浜アリーナで開催されたK-1のビッグイベントで武尊は村越優汰と対戦し、2-0の判定勝利をおさめました。

この勝利に対して「運営は武尊を贔屓している」だとか「村越にも武尊にも失礼だ」といった批判の声もあがっています。

僕もAbemaTVで視聴していたのですが、あの試合は延長に入るのが妥当だったような気がします。延長していれば、名勝負になったような気もするので少し残念な気持ちです。

きわどい判定勝利であったせいか、試合終了後の武尊のマイクアピールもいつもより少しぼんやりと大人しいように感じました。

「今日はKOを楽しみにしていたみなさん、ごめんなさい。次はもっと仕上げて絶対KOを見せるのでまた見に来てください」

「来年東京でオリンピックが開催されるんですけど。オリンピックに負けないくらいの格闘技の大会をやりましょうよ。みんなが望んでいる試合、来年実現させたいと思ってるんで、絶対勝って僕について来てくれるK-1ファン、武尊ファンを裏切らないんで、K-1最強を証明するんで応援よろしくお願いします。K-1最高!」

試合後のマイクで大晦日のRIZIN.20への緊急参戦を表明し、那須川天心とのドリーム・マッチが実現するのではないかとも言われていましたが、そのような話はいっさい出てきませんでした。現時点で、大晦日に 武尊vs那須川天心 が実現する可能性はゼロだと思っています。

そもそも、この村越戦の前から 武尊vs那須川天心 へのファンへの関心はかなり薄れていたような気がします。

そのきっかけになったのは、少し前にK-1の中村プロデューサーが記者会見という公の場で「 天心が武尊と試合をしたいなら、まずは天心がK-1と正式に契約を結んでから 」というコメントを出したことです。

武尊と対戦することを目標にK-1に参戦し、やっと武尊にたどり着いた選手の名前も例として挙げていました。捉えようによっては「仮に天心がK-1と契約しても、武尊とはすぐには試合をさせないよ」と言っているようにも思えました。

天心はRISEとRIZINという2つの団体を主戦場に活躍しています。その両団体から絶対的エースとしての扱いを受けています。将来的にはボクシングに参戦する可能性も天心本人が示唆しています。そんな状態で、縛りが厳しいと言われているK-1と契約するというのは非常に考えにくいことです。

そんなことはK-1サイドだって分かり切っているはずです。天心がK-1と正式に契約することなどないと分かっているからこそ、あのような言葉が出てきたのだと思います。

中村プロデューサーのあの会見は、 武尊vs那須川天心が実現する可能性はほぼないと断言したようなものだと考えています。無理な条件を提示して、諦めさせるということです。

それをファンも感じ取ったからこそ、ドリーム・マッチへの関心が薄れてしまったのだと思います。いわゆる「旬を逃した」というヤツです。

K-1が 那須川天心vs武尊 というドリーム・マッチを拒否するのは、いち格闘技ファンとしては残念ですが、企業の戦略としては決して間違ったものではないと考えています。

そもそも、 那須川天心vs武尊 というカードはK-1にとってはリスクが大きすぎますし、そんなリスクを背負って勝負しなきゃいけないほど経営が行き詰まってるワケじゃなさそうなんですよね。

むしろ、今年は両国国技館や横浜アリーナといった大会場で興行を開催したりと、経営は順調そうに見えます。

K-1の運営会社はすべての企業がそうであるように、利益の追求を最大の目標にしています。これはRISEやRIZINの運営会社だって同じです。

もしも看板選手の武尊が那須川天心に完敗してしまったら、K-1にとっては大打撃です。

皇治や武居由樹のような他の人気選手もいますが、圧倒的な人気とカリスマ性を誇る武尊の敗北はK-1全体の敗北というふうに見られ、ブランドイメージの低下は避けられません。

そんなリスクのある勝負に、経営が順調にいっている会社の経営陣がOKを出すというのは考えにくいと思います。

ジャンルは全く違いますが、むかしUWFインターナショナルが新日本プロレスとの対抗戦に打って出ました。

あの対抗戦の裏には、Uインターの経営の行き詰まりがありました。企業が大きなリスクをとるのは、経営がうまくいっていないからなんです。

Uインターは経営難からライバル団体との対抗戦という「麻薬」に手を出してしまいました。そして、その他にも様々な要因が積み重なり、解散という悲しい結末に終わります。

企業経営という面から見ると、武尊vs那須川天心というドリームカードの実現が難しいというのがよく分かると思います。安易に「麻薬」に手を出さないのは、企業として健全ともいえます。

K-1の運営会社としては、武尊に引導を渡すのは、同じK-1の選手にやって欲しいと思っているのではないでしょうか。最強決定戦はK-1の内部でやりたいという気持ちがあると思います。そうすれば、K-1というブランドは傷つきません。

正直、武尊の全盛期は徐々に過ぎているような気がします。村越戦は白熱した素晴らしい試合でしたが、ケガからの復帰戦とはいえ、前述のように物議をかもす勝ち方になってしまいました。

天心と武尊は同年代のような扱いを受けたりもしますが、天心21歳にたいして、武尊は28歳。7歳も差があるんですよね。ふたりの全盛期が重なっている時期はもうそろそろ終わってしまいます。武尊には時間がないんです。

自分がK-1運営の人間だったならば、今日の武尊の試合を観て「これなら天心にも勝てる!試合を組もう!」とはならないと思います。

村越戦の後、試合の解説をしていた魔裟斗が武尊vs 武居由樹 というカードを匂わせるような発言をしました。「どうせリスクの高い試合をするならば身内の選手と‥」というK-1の思惑をなんとなく感じてしまったのは僕だけでしょうか。

格闘技ファンとしては武尊vs那須川天心はぜひ観てみたいですが、このドリーム・マッチは夢のままで終わってしまいそうな予感がします。

残念なのは、 武尊vs那須川天心に一部のファンがとらわれすぎて、目の前の試合そのものに対する関心が薄れてしまっているように思えることです。なんだかんだ、まだふたりの対決を期待している人は少なくないんですよね。

言ってしまえば、ファンもドリーム・マッチという「麻薬」に酔ってしまっているんです。まだ試合をするとも決まってないのに!

今回の村越戦は接戦だったこともあって結果的に盛り上がりましたが、戦前は「試合よりも武尊のマイクが気になる」とか言ってる人もいましたからね(笑)。

天心も武尊も一流のキックボクサーで、とても面白い試合をします。ドリーム・マッチに気を取られすぎて、ふたりの試合そのものを楽しめなかったとしたら、こんなにもったいないことはありません。

夢の対決にわずかな希望を託しつつ、那須川天心と武尊というふたりの天才の試合をしっかりと噛みしめたいと思っています。

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