プロレスラーとメンタルヘルス

季節が秋から冬へと変わろうとしていますね。こういう季節の変わり目には、メンタルの調子を崩す方も少なくないそうです。

季節とは関係なしに、学校での人間関係や仕事のプレッシャー・上司からのパワハラなどでメンタルをやられてしまったという話もよく聞きます。
僕も最初に入社した会社はけっこうハードなところで、仲の良かった同期がうつ病になって退職に追い込まれていく姿を何度か目にしました。

実は、心身ともに頑強に見えるプロレスラーだって、メンタルの不調と無縁なワケではありません。それどころか、長年にわたって自分の不安定なメンタルと向き合いながらプロレスを続けているレスラーもいるんです。

今回は、プロレスラーとメンタルヘルスについて語っていきたいと思います。

ジェイク・リー
今年の「王道トーナメント」で悲願の初優勝を果たし、その後の三冠戦ではチャンピオン宮原健斗を最後まで追い詰めたジェイク・リー。彼は今後のプロレス界を背負って立つ人材のひとりといっても過言ではありません。

しかし、そんな彼にも辛い過去がありました。

ジェイクは学生時代のウエイトリフティングの実績を評価され、2010年に全日本プロレスに入団します。身長190センチを超えるジェイクは、ヘビー級戦士としての活躍を期待されていました。

しかし、彼は入団したその年の10月に退団してしまいます。後に彼自身によって語られるのですが、プロレスによる負傷などもあり、心が折れてしまったということです。一種の「うつ状態」にあったと思われます(デリケートな問題なので、「うつ病」と断言することはしません)。

その後は故郷の北海道に戻り、整体師の仕事を始めます。それと並行して札幌に
ジムを構える元UWF戦士の山本喧一のもとで総合格闘技のトレーニングを積み、試合にも出場しています。

2015年、ジェイクは全日に再入団を果たします。自分が最初に入団した後に入ってきた野村直矢、青柳優馬らの後輩という立場になってしまいましたが、ジェイクはそんなハンディを全く感じさせない大活躍を見せます。

チャンピオン・カーニバル出場、世界タッグ王座獲得、自らのユニット「Sweeper」を結成、アジアタッグ王座獲得、そして先述の王道トーナメント優勝。ジェイクは実力と実績で誰からも認められる一流のレスラーとなりました。

いちど心が折れてしまっても、それで全てが終わるワケではない。人生はいくらでも挽回できるということが彼の生き様から伝わってきます。

秋山準
全日本プロレスでデビューし、全盛期に三沢光晴らと共にプロレスリング・ノアを旗揚げしエースとして大活躍。そして古巣の全日本プロレスに帰還してからは社長として老舗団体の復活に尽力。現在は全日のゼネラル・マネージャーとして現場の責任者という大役を務めている秋山準。

そんな彼も実は、「パニック障害」という疾患に長年悩まされていました。

パニック障害とは、不安障害の一種とされており、突然の激しい不安や動悸・息切れなどに襲われます。人によっては「このまま死んでしまうのではないか?」と思ってしまうほどの苦しさを伴うということです。

秋山は27歳の頃からこのパニック障害と闘ってきました。試合中に発作が起きてしまったこともあるそうです。なんとか試合は無事に終えたものの、一時は和田京平レフェリーに試合を止めてもらおうかとも思ったそうです。

あの気の強そうな秋山がそんなことを一瞬でも考えてしまうほど、パニック障害の症状というのは苦しいのだと思います。

パニック障害というのは、強いプレッシャーにさらされるプロレスラーにとってはかなり厳しい疾患なのかも知れません。プロレスラーである以上、リングに立てばどうしても数多くの観客の注目を集めます。それが苦痛としか感じられなくなってしまえば、プロレスを続ける意義に疑問が生まれてしまいます。

秋山は20代後半にパニック障害になってからも、長い間トップ戦線で活躍してきました。GHCヘビー級王座は3度戴冠、三冠ヘビー級王座は2度戴冠してします。

メンタル疾患を抱えながらもトップレスラーとして活躍することが出来たのは、もちろん本人の心の強さが第一にあったと思います。しかし、それだけではなく、秋山がきちんと医師の診断を受け、処方された薬を服用し、「パニック障害であるプロレスラー秋山準」を認められたということも大きいのかなと思っています。

秋山は自身の疾患について講演で語るなど、パニック障害であることを隠してはいません。もちろん本人の中で葛藤はあったと思いますが、自分自身の弱点を認めて公言できるというのは、ある意味で秋山準という男の本当の強さを象徴していると思います。

上にあげた2人だけではなく、メンタルの課題を抱えているレスラーは他にもいます。一時的に休養して復帰する選手もいれば、治療を続けながら出場する選手もいます。決して珍しい話ではないんです。

あんなに強そうに見えるプロレスラーでも、メンタルの不調に悩まされることだってあるんです。一般人の僕らがそうなったとしても、なんの不思議もありません。

これは僕の完全な持論なのですが、心が苦しくなったら無理をしないことがいちばんだと思います。ジェイクのように一時的に離脱してしまってもいいと思っています。そして、秋山のようにきちんと治療を受けて欲しいです。

プロレスラーだってしんどくなるんです。メンタルを病むことなんて、全く恥ずかしいことではありません。

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