大恥の効能~那須川天心と矢地祐介の敗北から学ぶ~

なんだかとりとめもない話です。精神論じゃん!って思う人もいるかも知れません。
でも、ちょっと考えたことがあるので、ブログに書きました。

 

皆さん、大恥をかいたことってありますか?

 

もちろん、痴漢で逮捕されて新聞に名前が出ちゃったとかは別ですよ(笑)。
「俺は絶対に○○大学に行ってみせる!」ってクラスのみんなに豪語したのに見事に落ちたとか、そっち系のヤツをさらにスケールアップした感じの話です。

意外とないと思うんですよね。僕も小さな恥ならかきまくってきましたが(おい)、大恥といえるレベルのものになると心当たりがありません。

 

格闘家って、大恥をかくことのある仕事だと思います。

真っ先に思いつくのは、昨年大みそかのRIZINでフロイド・メイウェザーにボクシングルールで挑んで1RでKOされた那須川天心。
あれはメイウェザーが戦前から散々言ってきたようにエキシビジョンマッチなので、公式記録に天心の負けはつきません。
それでも、負けは負けです。

天心はメイウェザー戦にむけて様々なアピールを繰り返してきました。
「絶対に倒す」「世界を変えてみせる」
そんな威勢のいい言葉が次々に飛び出してきました。
現代の格闘家にとって、自分の試合を盛り上げるためにパフォーマンスをするのは決して悪いことではありません。むしろ必要なスキルだと思っています。
しかし、その試合に負けた場合、自分の吐いた言葉は自分への刃となって返ってきます。

天心はメイウェザーに完膚なきまで叩きのめされ、悔しさのあまり涙を見せました。
大恥です。神童であったはずの天心は大舞台で完敗を喫し、とんでもない大恥を大晦日の日本列島に晒してしまったわけです。

そんな天心を揶揄する人たちも当然出てきました。
パフォーマンスで発した挑発的な言葉が自分自身への侮蔑という形で降りかかってきました。

しかし、那須川天心はそこで挫ける男ではありませんでした。

再起戦となった「RISE WORLD SERIES」の1回戦では実力者から見事なKOを奪い、復活を印象づけました。
僕は大晦日のメイウェザー戦もこの1回戦もリアルタイムで観ており、天心はメイウェザー戦のダメージが抜けきっていないのではないか心配でした。
あの一戦が神童の運命を狂わせるのではないかとハラハラしていました。
しかし、結果は圧巻のKO勝利。那須川天心は見事に復活しました。

そして、天心はその後も連勝を続け、いよいよ9月には「RISE WORLD SERIES」の決勝を迎えます。

メイウェザー戦でのKO負けという大恥を経験したからこそ、天心という存在はより大きくなったような気がします。
「あの負けを払拭するぐらい輝きたい」そんな想いがあるのかも知れません。ファンもそんな天心に呼応します。
彼を応援するファンの声援は全く衰えることがありません。

RIZINの会場でVTRが流れるとき、あのメイウェザー戦が映し出されることがあります。
天心の逞しさに共鳴するかのように、看板選手である彼が完敗を喫した試合をも糧にしようという逞しさがRIZINにはあるようです。

 

先日7月28日に開催されたRIZIN.17でメインを飾ったのは、矢地祐介vs浅倉未来の1戦でした。

この試合に敗れた矢地もまた、人生で最大級の大恥を晒しました。絶対に負けてはいけない試合でした。

矢地は昨年の夏からRIZINで連敗を喫しており、この試合を落とせば3連敗になります。トップ戦線から完全に脱落してしまいます。
さらに戦前に対戦相手の朝倉未来が矢地の所属するジム「KRAZY BEE」をバカにするような発言をしたことも彼を追いつめました。

試合が迫るにつれ、矢地には珍しく、対戦相手の未来に対して怒りの感情を剥き出しにするコメントを発するようになりました。

矢地は緊張があったのか、試合ではいつもより固くなっているように見えました。
絶対に勝たなければいけないというプレッシャーのあまり、未来のカウンターを必要以上に警戒しているように見えました。

体格差を生かしてタックルに行くものの、未来の腰は想像以上に強く、なかなか上手くテイクダウンを奪うことが出来ません。
未来のカーフキックは矢地の脚を的確にとらえていき、完全にペースを握られてしまいました。
試合の終盤には打撃にうって出るも、未来は笑顔を浮かべながらその攻撃をいなしていきます。

結果は、3-0で未来の勝利。
格闘家としての差を見せつけられ、矢地は「絶対に負けてはいけない」はずの試合を落とし、3連敗を喫してしまいました。

まさに大恥です。
矢地は格闘家としての評価を一気に下げてしまいました。

 

しかし、試合後のRIZIN関係者のインタビュー記事などを読むと、まだまだ矢地を手離すつもりはないようです。
彼らとしては、矢地祐介という選手にまだまだ価値を感じているのだと思います。

(ツイートのリンク先の記事の後半は有料会員ではないと読めないのですが、ソースとして貼っておきます。面白い記事なので、お金を払っても読む価値はあると思います。)

矢地は敗け、大恥を晒しました。
しかし、だからこそ、そこから新たな物語が始まるのだと思います。

人間は、徹底的に叩きのめされた人間が復活するストーリーが大好きです。
すごくポジティブに考えれば、矢地はいま、そのストーリーの主人公になれるかも知れない立場にいるわけです。

修斗で環太平洋王者となり、RIZINでは5連勝を飾り、メインイベンターも務めた男がそう簡単に終わるワケがありません。

RIZINも矢地の復活ストーリーに期待しているようです。
もちろん、それは僕も同じです。

 

大恥をかける人間って、限られていると思います。

チャレンジしない人間、努力しない人間は、そもそも大恥をかく舞台にすら立つことが出来ません。

大恥を晒した彼らを笑う前に、自分もそんな舞台に立てるように頑張りたいなと思います。

頑張って、努力して、大舞台に立って、そこで大恥かいて、みんなから笑われて、それでも立ち上がれる人間って、むちゃくちゃカッコ良くないですか?

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