キックボクサー日菜太が新日のリングに立つ日

G1クライマックス、例年通りすごくもりあがっていますね。僕も8月の大阪大会は生観戦するので、今からとてもワクワクしています。いやあ、内藤と鷹木の一騎打ちが観られるなんて、ドラゲー時代の鷹木も知ってる人間としては堪らないですよ。

ところで皆さん、G1開幕してからサクッと忘れていることありませんか?

 

もしかしたら、思い出すのも不愉快だという人もいるかも知れませんね。キックボクサー日菜太(ひなた)選手の「新日のドーム大会出たい!」発言です。

格闘家の日菜太が新日本プロレス1・4東京ドーム大会参戦を改めてアピール!「プロレスファンにブーイングされながら入場したい」

僕はキックボクシングもすごく好きな人間ですし、こういう不規則な展開が割と好きな性格なので「日菜太が新日出るかも知れないんだ。面白そうじゃん」と思えたのですが、そうじゃない人も多かったみたいで‥。

「プロレス観に行くのに、キックの試合なんか観たくない」

「ドームで試合したいなら、自分の団体でやれ」

「そもそもコイツ誰だよ」

けっこう辛辣な意見も多かった気がします。新日がプロレス以外の格闘技と絡むと、かつての暗黒期を連想してしまう人もいるみたいですね(笑)。プロレスとキックボクシングは全くの別競技なので、違和感を持つ人がいるのも当然かなと思います。

 

 

しかし、もしもこれが日菜太じゃなくて、彼よりもはるかに知名度の高い那須川天心の発言だったら、どういう反応だったんでしょうか?たぶん、好意的な意見も多かったんじゃないかなと思います。自分の好きな新日に超有名な格闘家が参戦を希望してくれるというのは、ファンとして嫌な気持ちはしないと思うんです。すごく失礼な言い方になるんですけど、日菜太の知名度の低さが問題の根本にあるような気がします。

 

 

でも、日菜太って実はキックボクシングではかなりの実績を残していますし、一時期は地上波のゴールデンタイムで彼の試合が放映されたことだってあったんんです。彼が当時もっとも活躍していたのは「K-1 WORLD MAX」というK-1のシリーズでした。

あんまりキックに興味のない人も聞いたことありませんか?あの魔裟斗が激闘を繰り広げていたシリーズです。日菜太はこのK-1 WORLD MAXで城戸康祐、マイク・ザンビディスといった強豪からも白星を挙げています。ちなみに、マイク・ザンビディスはあの山本”KID”徳郁をKO負けに追い込んだ実力者です。

僕もテレビで当時の日菜太の試合を観ていましたが、非常にキックの多彩な選手だなという印象でした。城戸康祐から勝利を奪ったときは、またすごいキックボクサーが現れたと思いました。

 

 

しかし、時代は彼に味方してくれませんでした。彼が主戦場にしていたK-1 WORLD MAXを運営していた会社が深刻な財政難に陥ってしまい、選手へのファイトマネー未払いまで起きてしまったんです(日菜太が未払いの被害にあったかどうかは分かりません)。その後のK-1は激動の時代を迎えます。運営会社が変わったりもしました。さいわいにもK-1というブランドは知名度も高く、運営会社が破産しても、あらたな引受先が現れました。現在の新生K-1はかつて日菜太が活躍していた頃とは全くの別会社が運営しています。

日菜太は2011年から2017年までのあいだ、K-1と名のつく大会にいちども出場していません。彼は選手として脂が乗りきっている時期に、主戦場であるK-1の混乱に巻き込まれるようなかたちで、自らの主戦場を失ってしまいました。もしもあのままK-1が存続していれば、彼の現在はもっと変わったものになったと思います。きっと、もっと知名度も高かったはずです。

 

日菜太がどういう選手なのか、なぜ知名度が低いのかという話は以上です。
キックに興味のない人にはつまらなかったかも知れません(笑)。

 

 

そんな日菜太はなぜ「新日のドーム大会出たい!」なんて言ったんでしょうか?リンク先を見てもらえれば分かりますが、彼はドームでプロレスデビューするとはひと言も言ってないんですよね。どちらかといえば、キックの試合をしたいというようなニュアンスにも受け取れます。

実際、やるとしたらキックの試合になるだろうなと予想しています。日菜太はプロレスの試合に出たこともありませんから、当然受け身は取れません。プロレスのキックとキックボクシングのキックは全くタイプが違いますから、そこも苦労するハズです。体重も70キロ程度なので到底プロレスの技を受けられるとも思えません。やるとしたら、間違いなくキックボクシングの試合だと思います。相手は同じ階級のキックボクサーです。新日にはそもそも日菜太と体重が釣り合うようなレスラーはいませんし、大事なレスラーを昔の中西学のような目に合わせるワケにはいきません。

 

 

日菜太はどうしてキックボクシングの試合を新日のドーム大会でやりたいんでしょうか?それは「自分が今後主戦場にするキックボクシング団体の集客を改善するため」に尽きると考えています。

日菜太は8月にKNOCK OUT(ノックアウト)という団体の興行に出場します。この団体はあまり経営がうまくいっていないと言われており、つい最近トップの交代劇も起こりました。一部の団体をのぞけば、国内の格闘技団体の大半が経営に苦労しています。うまくいっているのは新生K-1とRIZINくらいではないでしょうか。経営がうまくいっていないということは、当然選手へのファイトマネーを弾むことも出来ません。

 

今後もここからは完全に僕の推測なのですが、彼は新日ドーム大会に出場することにより、KNOCK OUTと自分自身への注目度を少しでも高め、KNOCK OUTへの来場者数を増やしたいというのが狙いだと思います。アンチが大半かも知れませんが、ドームにはたくさんのお客さんが来ます。その中の20人にひとりでもKNOCK OUTの会場に来てくれたら、彼の狙いは大成功ということになります。今年のレッスルキングダムの来場者は約3万8千人でしたから、来年も同程度の来場者だとして、20人にひとりが興味をもってKNOCK OUTの会場に来てくれたら1900人もお客さんが増えることになります。後楽園ホールがほぼほぼ満員になるレベルです。

 

 

ご存知の方も多いとは思いますが、新日本プロレスとKNOCK OUTは同じブシロードが運営しています。木谷オーナーとしても、不振が続くKNOCK OUTに絶好調の新日のパワーを活用したいと考えているのではないでしょうか。経営の手法としては、決して間違っているとは思いません。僕は、日菜太の発言は木谷オーナーも事前に了解していたのではないかと勘繰っています(笑)。

 

 

もしも日菜太が実際にドームでキックの試合をしたら、KNOCK OUTへの来場者数は増えるか変わらないかだと思います。日菜太をバッシングする人のほとんどはKNOCK OUTのファンではないでしょうし、ドームに出場したからと言って来場者数が減るということはありえません。

日菜太にとってもKNOCK OUTにとっても、失うものはないんです。日菜太としては、もしもドーム出場を果たしてKNOCK OUTへの来場者が増えたとしたら、当然ファイトマネーの交渉材料にすると思います。キックボクサーもプロレスラーと一緒で個人事業主です。少しでも自分が有利になるようにアクションを起こすのはごくごく当たり前のことだと思っています。

 

 

僕はこの前の日菜太の発言を「相変わらず元気だなあ」と割と肯定的に受け取っていたんですが、もちろん否定的な人もいると思います。決して日菜太のドーム出場を肯定しろと言っているワケではありません。

このブログで、日菜太というひとりのキックボクサーに少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

こんなことを書くと怒られそうですが、日菜太のこの図太いマインドって、ちょっとレスラーに近いものがありませんかね(笑)?

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