宮原健斗は全日のオカダになれるのか!?

先日、横浜文化体育館で行われた三冠ヘビー級タイトルマッチで、挑戦者の宮原健斗が王者のゼウスにシャットダウン式ジャーマンスープレックスで勝利した。これにより、宮原は4度目の三冠王座の戴冠となった。若干29歳にして、この記録はあまりにも偉大だと思う。全日は伝統的に、あまり若いチャンピオンがいなかった。宮原が2016年に三冠王座を初戴冠するまで、20代で三冠ベルトを巻いたのはテリー・ゴディと小橋建太のふたりだけだった。
新日本プロレス、プロレスリング・ノアのような多団体と比較すると、全日本プロレスは若手が団体のトップに立つということが滅多になかった。

 

それを打ち破ったのが宮原だった。前述のゴディや小橋がは短命王者に終わったしまったが、宮原は最初に三冠王座を獲得してから8度の防衛に成功している。これは川田利明の10回に次ぐ歴代2位の防衛回数なのだから凄い。彼は間違いなく「宮原時代」を築き上げた。
僕は同い年のチャンピオンが防衛を重ねていく様をリアルタイムで目にしていたのだが、「次こそ王座から陥落してしまうのではないか」という大きな不安を胸に抱きながらの観戦だった。立派な肉体、説得力のある技、王者としての責任感に満ち溢れた言動を目にしていても、どことなく頼りなさが残っていた。諏訪魔、秋山準、関本大介といった挑戦者と比較してしまうと、どうしても若い王者に不安を抱かざるをえなかった。宮原が無事に王座を防衛したときの僕の感想はいつも「危なかった…」だった。宮原は決して絶対王者ではなかった。

 

宮原は9度目の防衛戦で石川修司の前に敗北。三冠ベルトを明け渡してしまった。しかし、両国国技館という大舞台で見事にそのベルトを取り戻してみせた。2度目の戴冠ということもあり、宮原というチャンピオンに対して僕もある程度の安心感を持つようにはなっていた。しかし、なんと宮原は諏訪魔を迎え撃った初防衛戦でまさかの敗戦。防衛回数ゼロでベルトを手放してしまう。
その後は諏訪魔からベルトを奪ったジョー・ドーリングを相手にタイトルマッチにこぎ着け、3度目となる戴冠を果たした。さらにチャンピオン・カーニバル決勝で苦渋を舐めさせられたノアの丸藤正道を初防衛戦の相手に迎えると、接戦の末に見事勝利。第2の宮原時代を築くかと思われた。しかし、大阪府立体育館で行われた三冠戦では地元の大声援を受けたゼウスの前に敗戦。再びの長期政権を築くことは叶わなかった。そのゼウスからベルトを取り戻したのが、冒頭で記した先日の横浜文体での試合だった。

 

宮原健斗というレスラーは、挑戦者という立場になると無類の強さを発揮する。三冠王者を経験してからの三冠挑戦にはすべて成功している。ジョーのような強力な外国人が相手でも、石川やゼウスのような自分からベルトを奪ったレスラーが相手でも、宮原はチャレンジに強い。しかし、王者として挑戦者を迎え撃つ立場になると、意外なほどのもろさを見せてしまう。新日のオカダ・カズチカと比較すると、チャンピオンとしての安定感に欠けるといわざるをえない。ちなみに、オカダは新日のフラッグシップタイトルであるIWGPヘビー級王座を4度獲得しているが、初防衛戦でその王座を落としたことはいちどもない。

 

4度目の王座戴冠を果たした宮原がどんな防衛ロードを築くのかは全く分からない。個人的に長期政権を築いて欲しいと思っているが、今の全日は他団体の強敵も積極的に三冠ヘビーに挑戦していくような環境にあるし、ジェイク・リーに代表される宮原の後輩たちも確実に力をつけている。宮原の防衛ロードは非常に厳しいものになると思う。宮原をオカダのような安心感のある王者として見れる日はまだしばらく来ないかも知れない。
でも、逆にそれが宮原というレスラーの魅力だともいえる。緊張感のないタイトルマッチは面白みに欠ける。タイトルマッチにおける緊張感とは「チャンピオンが負けるかも知れない」という不安から醸造される。そんな不安があるからこそ、宮原が防衛に成功した時の喜びは何倍にもなる。このブログのタイトルを『宮原健斗は全日のオカダになれるのか!?』にしておいてこんなことを書くのもおかしいが、宮原は決してオカダになる必要はないのかも知れない。

 

宮原健斗は悪いレスラーだと思う。ファンを不安にさせ、その不安を餌に試合を盛り上げる。そして、勝利した時に圧倒的なカタルシスをもたらす。宮原のファンは、みんな彼の持つ中毒性におかされている。もちろん、僕もそのひとりなのは間違いない。まだまだま宮原健斗から目が離せない。

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