鈴木みのるの新たなる航路

現在、ヒールユニット「鈴木軍」の首領として新日本プロレスで暴れまわっている鈴木みのる。最近、新日における彼の影が少し薄くなっているような気がする。新日屈指の人気レスラーである内藤哲也とのシングルで連敗したことは、彼のシングルプレーヤーとして「衰え」を感じてしまった。
そして、同じ鈴木軍のレスラーであるタイチは、後藤洋央紀を破ってNEVER無差別級王座を戴冠した。正直なところ、最近ではみのるよりもタイチの方がシングルプレーヤーとして活躍しているように思える。少し前までなら、こんな光景は考えられなかった。ファンの中からも「ボス(鈴木みのる)が鈴木軍から追放されるのではないか」といった意見が出るのも頷ける。SNSをチェックすると、タイチ、TAKAみちのく、エル・デスペラードといった鈴木軍のメンバーとみのるとの間に距離が広がっているような印象も受ける。

 

みのるも50歳になった。あの年齢で選手層の厚い新日でトップ戦線に食い込んでいるのだから、それだけで驚嘆すべきなのかも知れない。同い年の永田裕二が「卒業」してしまったG1クライマックスにも、みのるは出場している。しかし、鈴木みのるは新日における自分の現状に満足しているのだろうか?「自分は年の割に頑張っている」と納得しているのだろうか?答えは否だと思う。

 

みのるは横浜高校レスリング部での実績をひっさげ、新日本プロレスに入団した。デビュー直後から期待されており、アントニオ猪木とのシングルマッチが組まれるほどだった。しかし、みのるは新日を退団し、前田日明、高田延彦、藤原喜明らと共にUWF(第二次)に闘いの場所を移す。UWF崩壊後はプロフェッショナルレスリング藤原組を経て、盟友である船木誠勝と共に総合格闘技団体「パンクラス」を立ち上げる。みのるは現在も、パンクラスのプロレス部門である「パンクラスMISSION」に所属している。
みのるは、闘いの場を移すことに躊躇がない。ケガの影響で総合格闘技からプロレスに回帰してからも、新日、全日、ノアなど闘いの場所を次々に変えてきた。そして現在、みのるは再び闘いの場所を変えるときが近づいているのではないかと考えている。

 

みのるが次に闘うべき場所、それは「全日本プロレス」ではないかと思う。長く低迷していた全日だが、ここ最近はエースである宮原健斗の活躍もあり、確実に人気を取り戻している。2018年のチャンピオンカーニバルは、後楽園ホールが満員になるほどの人気だった。さいたまスーパーアリーナ(コミュニティアリーナ)、エディオンアリーナ大阪第一競技場といった大きな会場で大会を行えるようにもなった。
しかし、エースである宮原を中心としたマッチメイクに、少しマンネリ気味の傾向がみられるようになった。宮原と肩を並べる人気レスラーもなかなか生まれていない。全日のフラッグシップタイトルである「三冠ヘビー級王座」の現在の王者はゼウスだが、彼がメインイベンターを務めた千葉での大会は、三冠ヘビー級王座のタイトルマッチを組んだにも関わらず、非常に苦しい客入りだった。ゼウスにはまだまだ伸びしろがあると思うが、少なくとも現在の彼では、宮原に匹敵する人気を獲得することは難しいと思う。
そんな全日に「世界一性格の悪い男」鈴木みのるが投入されたらどうなるだろうか?現在の全日には、圧倒的なヒールが存在しない。それゆえに、ヒールが与えるストレス、ヒールの野望が打ち砕かれたときのカタルシスが存在しない。鈴木みのるは、全日の観客に大きなストレスとカタルシスを与えられると思う。過去の実績を考えれば、宮原の対極に立つことになんの違和感もない。

 

みのるは過去にも全日に長期参戦したことがあり、三冠ヘビー級王座も2度にわたり戴冠している。全日にもしっかりとした因縁を残しているのだ。みのるが参戦していた頃の全日は、今に比べてまだまだ苦しい状況だった。復活を遂げつつある全日に、苦しい過去を知るみのるが乗り込み、宮原やゼウスに宣戦布告する。観客はブーイングを飛ばすかも知れない(全日ファンは外敵にもあまりブーイングしないが…)、しかし、みのるにとってそんなブーイングは「みのるは年なのに頑張ってるなあ」という温かい拍手よりも、何倍も欲しかったものではないだろうか。

 

完全に妄想の話だが、近日中にみのるが鈴木軍を追放される。ひとり新日を去ったみのるは、10月21日に行われるゼウスvs宮原の試合終了後にリングに上がり、その試合の勝者に宣戦布告する。そんな光景を思い描いてしまう。試合が行われるのはみのるの地元である横浜だというのも、妄想を刺激する。

 

ファンにこんな妄想を抱かせてくれるのが鈴木みのるというレスラー。闘う場所が変わったとしても、彼から目を離すことは出来ない。鈴木軍の「船長」から解放されたみのるは、どんな航路を描くのだろうか?

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